■ピーター・コリントン Peter Collington

1948年イギリスで生まれ、1986年絵本作家としてデビュー。『ちいさな天使と兵隊さん(すえもりブックス)』でスマーティー賞受賞。同作品はテレビでアニメーション化され高く評価される。

日本語訳されたもの
・おりこうねこ 徳間書店 2000年 
・トゥース・フェアリー BL出版 1998年 絶版
・聖なる夜に BL出版 2000年
・ちいさな天使と兵隊さん すえもりブックス 1990年
・天使のクリスマス  ほるぷ出版 1990年 

イギリスの子供達は、抜けた歯を枕の下に置くと「歯の妖精」がやってきて、寝ているうちにお金と交換してくれると親に教えられます。この絵本はその「歯の妖精」のとある一夜を描いた作品です。緻密な書込みとカラフルな色使い(かといって目に付くほど派手な訳ではないです)は私好みです。
抜けた歯をマッチ箱の中に入れ、枕の下にそっとしのばせ眠りについた少女の元に妖精がやってくるのですが、それ以前の描写がまた面白いです。妖精がトロッコで洞窟に入りスコップで硬貨の原料を削り出し、巨大な窯で鋳造するシーンが細かく描かれているのです。
そして、少女の枕元にやって来てからの妖精の行動も非常に細かく描かれており、なんだか本当にこんな出来事が今もどこかで起こっていそうな気さえしてきます。そして妖精は歯と硬貨を交換すると再び自宅に戻り、今度は歯を削って細かくしピアノの鍵盤の材料に再利用していました。このファンタジックさ、たまりませんね。そして夜が明け、少女がマッチ箱を開けるとそこには妖精により交換された硬貨があるのです。微笑む少女、そして微笑む読者。

セリフが一つも無いことが、夜の沈黙を際立たせています。寝る前に読むとぐっすり眠れそうです。